別の記事で『はたらく細胞』という作品を紹介しました。赤血球や白血球、血小板などが人物として登場し、体内でさまざまなはたらきを見せてくれます。細胞にはこんな機能や役割があるんだよ、ということを擬人化でわかりやすく描いてくれているマンガで、今大人気です。

ところで、みなさんも健康診断や人間ドックで血液検査を受けていると思いますが、ひとつひとつの内容についてきちんと確認してみたことはあるでしょうか。もらった結果に「正常」と判定がついていたらそこで安心し、あとは流し見していたりしませんか?

「でも数字とアルファベットがなんだかたくさん並んでいて結果の見方がわからない…」という方も多いかと思います。そこで、ここでは血液検査でわかることの概要を項目ごとに簡単に解説していきます。

肝機能検査とは

肝臓は人間の身体の中でも大きな臓器で、さまざまな役割を果たしています。主な機能は「代謝」「解毒」「生成」で、よく「体内の化学工場のようなもの」と例えられます。

肝臓は消化管で消化・吸収されて送られてきた栄養素を、何百種類にもおよぶ酵素のはたらきで代謝(分解・合成)します。代謝した栄養素を血液中に送り出したり、余った分を蓄えておき必要になったら送り出すという機能もあります。

また、肝臓には栄養素以外にもいろいろなもの(食品添加物や薬物、アルコールやニコチン、細菌など)が流れ込みます。肝臓はそれらを分解し、無毒化(解毒)しています。

さらに、肝臓では脂肪の消化や吸収を助ける機能をもつ胆汁も生成しているのです。

このように、重要な役割をたくさん担っている肝臓ですが、もともとの再生能力が高く、ダメージを受けにくい反面、病気になっても自覚症状が出にくく気づきにくいという傾向もあります。

そのため「沈黙の臓器」ともいわれ、異変を感じたときには深刻な状態になっているということも少なくありません。そうしたことから肝機能検査は項目も多めになっています。

肝臓系の機能の検査

・AST(GOT):「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」
・ALT(GPT):「アラニンアミドトランスフェラーゼ」
→肝臓に障害があると数値が上がります。また、心筋梗塞や筋肉の病気でも数値が上昇します。

・γ-GTP:「ガンマグルタミルトランスフェラーゼ」
→飲酒によるアルコール性肝障害で数値が上がることで有名です。ほか、慢性肝炎や脂肪肝、薬剤による肝障害、胆のうや胆管の病気(胆汁の通過障害)でも数値は高くなります。

・AL-P:「アルカリフォスファターゼ」
→胆汁の流れが悪い場合(胆汁の通過障害)や骨の疾患、副甲状腺疾患、甲状腺疾患などで数値が上昇することがあります。

・Ch-E:「コリンエステラーゼ」
→脂肪肝、ネフローゼ症候群、肥満などでは数値が高くなり、肝炎や肝硬変、栄養失調や貧血などでは数値が低くなります。
※ネフローゼ症候群:尿中に蛋白が多量に漏れ出てしまい血液中の蛋白が減少してしまう(低たんぱく血症を起こす)病気

・T-Bil:「総ビリルビン」
→肝臓や胆道に異常がある場合や、特殊な貧血などで数値が高くなります。胆汁の流れを悪くする胆道疾患で上昇すると黄疸(皮膚や眼球が黄色くなる症状)になります。

・LDH:「乳酸デヒドロゲナーゼ」
→肝障害がある場合にAST、ALTとともに上昇します。肝臓だけでなく、肺や筋肉などの病気、激しい運動の直後でも数値が高くなります。

・TP:「総タンパク」
→血液中(血清中)の蛋白を調べる検査で、肝障害や悪性腫瘍がある場合に数値が低くなります。

・ALB:「アルブミン」
→代表的な血清蛋白のひとつで、肝障害の場合や栄養状態が悪いとき、消化吸収が悪いときなどに数値が低くなります。

腎機能検査とは

腎臓は体内で不要になったもの(老廃物)を含んだ血液をろ過しています。腎臓でろ過された血液は心臓に戻され、取り除かれた老廃物は尿として排泄されます。

このように、いらないものを分離して体外に排出し、きれいになった血液をまた全身に循環させて、ほかの臓器がそれぞれきちんと機能できるように調整しているのが腎臓です。

腎機能検査では、血液検査とあわせて尿検査をおこなうことで、腎臓のはたらきに異常があらわれていないかをチェックするという目的があります。また、腹部超音波検査で腎臓の形や結石などの形状も調べることができます。

腎機能障害(腎臓病)には、急性腎炎、ネフローゼ症候群や腎不全などがあります。しかし、急性腎炎以外は肝機能障害と同じように症状が進行するまでわかりにくい傾向があるため、健康診断や人間ドックの検査で発見されるというケースがほとんどです。

腎臓系の機能の検査

・BUN:「尿素窒素」
・CRE:「クレアチニン」
→どちらも腎機能の指標で、腎臓のはたらきが低下すると数値が上がります。

・UA:「尿酸」
→プリン体(タンパク質の一種)が代謝されるときに生じます。飲酒や肉食など偏った食事、腎機能障害で数値が上がり、高い状態がつづくと痛風発作(関節痛)を引き起こします。

尿酸代謝検査とは

新陳代謝にともない、古い細胞が分解されて新しい細胞に代わるときにできる老廃物が上記の「尿酸」です。食物に含まれている「プリン体」も体内に吸収されると尿酸になり、血液の中で増えていきます。

本来それらの老廃物は尿として排出されます。しかし、増えすぎてしまうと血液中で結晶となってしまいます。そしてその結晶が関節に蓄積されると突然激痛が走ります。それが痛風発作です。

このように、尿酸の数値が高くなると痛風や腎機能障害を起こしたり尿管で結石になったりする場合があるため、尿酸代謝検査は腎機能検査の1つともいえます。

糖代謝検査とは

糖代謝とは、食事で摂ったエネルギーを身体(臓器)が消費し活動して、余った分は貯蓄しておき必要になったら使用するというリズムのことです。

糖は生命を維持するうえで重要なエネルギー源であり、血管を通じて運ばれ、脳や筋肉などで使われます。血液中の糖(ブドウ糖)の量=血糖値は、一定の濃度に保たれるようにいろいろなホルモンや神経のはたらきで調節されています。

食後は一時的に血糖値が上がりますが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが中心となり各臓器にエネルギーを届けますので、通常であれば数時間すると血糖値は元に戻ります。

しかし、インスリンの分泌やはたらきが不足、もしくは過剰になると糖代謝異常が起こりますので、そうした兆候がないかチェックするのが糖代謝検査の主な目的です。

糖の代謝の検査

・血糖
→血糖値は血液内のグルコース(ブドウ糖)濃度で、標準より高い場合には糖尿病やホルモン異常の可能性があります。

・HbA1c:「ヘモグロビンA1c」
→ブドウ糖と結合した赤血球ヘモグロビンの割合です。過去1~2ヵ月間の平均的血糖値を反映するので、糖尿病の治療(血糖値コントロールの評価)に必要な検査です。

脂質代謝検査とは

脂質代謝とは、糖と同じようにエネルギーを身体(臓器)が消費し活動して、余った分は貯蓄しておき必要になったら使用するというリズムのことです。

脂質は主に中性脂肪とコレステロールに分けられます。中性脂肪は緊急時のためにエネルギー源として蓄えられ、コレステロールはホルモンや消化酵素、細胞膜の原料となり、内臓や血管の壁など身体をつくる大切な役割を担っています。

しかし、必要以上に蓄積されてしまうと動脈硬化の原因ともなるため、血液中に増えすぎていないかチェックする目的で脂質代謝検査はおこなわれます。

脂質の代謝の検査

・T-Cho:「総コレステロール」
→血中に含まれる脂質で、下記のHDL-ChoとLDL-Choの総和をあらわしています。現在この値のみを根拠として脂質異常症は判定しません。

・HDL-Cho:「HDLコレステロール」
→「善玉コレステロール」といわれるもので、血管にたまったコレステロールを肝臓に運び、動脈硬化を予防するはたらきがあります。数値が低いと動脈硬化が疑われます。

・LDL-Cho:「LDLコレステロール」
→「悪玉コレステロール」といわれるもので、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。動物性脂肪(獣肉類・乳製品・卵黄)の摂取で上昇します。

・TG:「中性脂肪」
→血液中の脂肪の一種で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。過飲過食や運動不足で数値が上がり、高い状態がつづくと動脈硬化や心臓病、脳卒中の原因になります。

電解質検査とは

電解質とは、水に溶けると電気を通す物質(ミネラルのイオン)のことです。人間の身体の約70%は水分(体液)で、体液には生きていくうえで欠かせないミネラルが溶け込んでいます。

電解質は身体の中の水分量やpH(酸性・アルカリ性の程度)をほぼ一定に維持したり、神経の伝達、筋肉や心臓の収縮にかかわるなど、さまざまな役割を果たしています。

しかし、血液中の電解質濃度のバランスに変化があらわれた場合、腎機能やホルモンのはたらきの異常が疑われます。そうした兆候がないかをチェックするのが電解質検査の主な目的です。

電解質の検査

・Na:「ナトリウム」
→脱水や糖尿病、慢性腎不全などで数値が上がり、下痢、嘔吐、むくみなどでは数値が下がります。

・K:「カリウム」
→腎不全、やけど、けがで数値が上がり、下痢や嘔吐などで数値が下がります。

・Cl:「クロール」
→食塩の摂り過ぎや脱水、慢性腎臓病で数値が高くなり、水分の摂り過ぎや食塩不足などで低くなります。

・Ca:「カルシウム」
→悪性腫瘍では数値が高くなり、ビタミンD欠乏症や腎不全では数値が低くなります。

血液一般・貧血検査とは

血液検査は健康診断や人間ドックで必ずおこなわれます。血液のうちの約半分は赤血球や白血球、血小板などの血球(細胞成分)です。残りの血漿(液体成分)は、水にタンパク質や糖、脂質、電解質などが溶け込んだものです。

その血液は絶えず身体の中をめぐりつづけています。すみからすみまで、いたるところをずっと循環しながらいろいろなもの、たとえば酸素や栄養、二酸化炭素や老廃物などを運んでいます。だからこそ、血液には「あなたの大事な情報」が実はぎっしり詰まっているのです。

それらの細胞の量や形、止血の機能をチェックすることで、全身の臓器や組織の異常を調べるというのが血液一般検査の主な目的です。

血液一般(貧血・炎症などの検査)

・RBC:「赤血球数」
→赤血球は肺から受け取った酸素を全身のあらゆる細胞まで運び、いらなくなった二酸化炭素を受け取って肺まで戻す役割を果たしています。数値が低い場合には貧血、高い場合には多血症(血流が悪くなったり血管が詰まりやすくなってしまう症状)が疑われます。

・Hb:「ヘモグロビン」
→ヘモグロビンは血液中の赤い色素です。赤血球の内部にあり、酸素と結びつくことによってその酸素を全身に送り届けています。数値が低いと貧血(息切れやめまいなど)の症状があらわれます。

・WBC:「白血球数」
→白血球には病原体から身体を守る(外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスなど異物を排除する)役割があります。ケガや炎症などがあると数値が上がり、白血病やがんなどの血液疾患でも高くなります。数値が低い場合は再生不良性貧血やウイルス感染などが疑われます。

・PLT:「血小板数」
→血小板は止血を担当する血球(血液細胞)です。数値が低い場合は出血しやすくなったり血が止まりにくくなり、肝臓や血液の病気が疑われます。数値が高い場合は血栓(血の塊)ができやすくなり、多血症などが疑われます。

・Fe:「血清鉄」
→血液中の鉄分はヘモグロビンの原料となるため、低下すると貧血の原因になります。

膵機能検査とは

膵臓ではでんぷんを分解する酵素=アミラーゼが生成されています。アミラーゼは唾液腺でもつくられており、血液中にアミラーゼが漏れ出てきた場合は膵臓や唾液腺の異常が疑われます。

膵臓の機能の検査

・AMY:「血清アミラーゼ」
→炭水化物(でんぷん)を分解する消化酵素で、唾液や膵液に含まれます。急性膵炎や急性耳下腺炎など、膵臓や唾液腺に炎症や障害があると数値が上昇します。

免疫学検査とは

免疫とは、病気にかからないように身体が対抗する機能です。外部から病原体が体内に侵入すると、免疫がはたらき、抗体がつくられます。

免疫学検査はその抗体の種類や量を調べることで、どのような病気に対して免疫がはたらいているのかをチェックすることが主な目的です。

ほかの検査とあわせておこなうことで、なんらかの感染によるものなのか、免疫異常によるものなのかなど、原因を特定していきます。

感染症や免疫異常の検査

・CRP:「C反応性蛋白」
→血液中の蛋白(タンパク)の一種で、身体のどこかに炎症がある場合に数値が高くなります。細菌やウイルスに感染したり、がんによって組織に障害が起きていたり、関節リウマチなどがあると数値が上がります。肥満によっても数値が上がることがあります。

採血されるときの注意点

・血液は食事の影響を受けやすいので事前の(飲酒を含む)食事制限は守りましょう
・採血で気分が悪くなったり気を失った経験がある方は事前に申し出ましょう

血液検査でわかること

このように、「採血」という簡単な方法でありながらも血液からはたくさんの情報を得ることができるので、多くの目的や意義をもつ血液検査は、非常に重要なものなのです。

あなたの歴史を紐解き、あなたの将来をも左右する血液検査ですので、チクッとするのにはいくつになっても慣れないかもしれませんが、そんなときはその大切さを思い出し、心して臨みましょう。

※こちらで解説した各細胞の役割や機能、各検査の意味合い、各数値から推測される病気や疾患などは、ごく一部の代表的な例です。検査結果をご覧になる際に参考にしていただければと思いますが、不明な点や不安なところは自己判断せず、必ず医師に確認してください。